
スマートフォンや自動車、産業機械、通信機器、医療機器など、現代社会を支える多くの製品には半導体が使用されています。半導体デバイスの高性能化や小型化が進むにつれて、それを製造する装置や部品、治工具にも、より高い精度が求められるようになりました。
こうした半導体産業の発展を支えている技術の一つが「微細加工」です。
微細加工とは、ミクロン単位、場合によってはそれより小さな寸法や形状を作り込む加工技術の総称です。半導体そのものの回路形成だけでなく、製造装置に使用される精密部品、位置決め部品、金型、電極、治工具などにも活用されています。
本記事では、微細加工と半導体の関係、代表的な加工方法、求められる精度や品質管理、加工会社を選ぶ際のポイントについて解説します。
半導体分野で微細加工が必要とされる理由
半導体分野では、製品の小型化や高性能化に伴い、構成する部品や回路の微細化が進んでいます。加工対象が小さくなるほど、わずかな寸法差や表面の傷、形状のばらつきが、製品の性能や製造工程に大きな影響を与えます。
そのため、半導体製造に関係する部品には、一般的な機械加工以上の精密さが求められます。
半導体の小型化と高集積化に対応するため
半導体は、一つのチップにより多くの素子や電子回路を集積する方向へ進化してきました。回路や部品が小さくなれば、同じ面積の中に多くの機能を搭載でき、処理性能の向上や消費電力の低減につながります。
一方、構造が微細化すると、製造装置を構成する部品にも厳しい寸法精度が必要です。部品の位置が数μmずれただけでも、装置全体の動作や加工結果に影響する可能性があります。
半導体の性能を安定させるには、チップだけでなく、その製造を支える装置部品や治工具についても高精度に仕上げることが重要です。
製造装置の位置決め精度を高めるため
半導体製造では、材料の搬送、位置決め、保持、検査など、多くの工程が繰り返されます。各工程で使用される部品に寸法誤差があると、その誤差が積み重なり、製品の品質や歩留まりを低下させる原因になります。
特に、次のような部品では微細加工技術が重要です。
- ウエハーや小型部品を保持する治具
- 装置内で部品を正確に配置する位置決め部品
- 微小な穴や溝を持つノズル、プレート
- 検査装置や搬送装置に使用する精密部品
- 複雑な形状を持つ電極や金型部品
これらの部品を高い精度で加工することで、装置の再現性や安定性を高められます。
半導体製造の歩留まりを支えるため
半導体製造では、同じ工程を大量の製品に対して繰り返します。そのため、わずかな加工不良や位置ずれでも、多数の不良品につながることがあります。
精度の高い部品や治工具を使用すれば、製造条件を安定させやすくなり、品質のばらつきや不良の発生を抑えられます。微細加工は、製品の小型化を実現するだけでなく、半導体製造における品質と生産性を支える技術でもあるのです。
半導体関連部品に用いられる微細加工の方法
微細加工にはさまざまな方法があります。加工する材料、形状、寸法、必要な精度、表面品質によって、適した技術は異なります。
ここでは、半導体関連の精密部品や治工具に用いられる代表的な加工方法を紹介します。
切削加工
切削加工は、エンドミルやドリルなどの工具を使い、材料を削って目的の形状を作る方法です。平面、溝、穴、段差、三次元形状など、幅広い加工に対応できます。
半導体製造装置では、位置決め部品、搬送アーム部品、ウエハー保持治具、ノズル、精密ステージ部品などの製造に活用されます。
微細な切削加工では、小径工具の選定だけでなく、工具の回転数、送り速度、切込み量、工具の振れ、加工中の熱などを細かく管理しなければなりません。
特に小さな工具は、わずかな負荷でも折損する可能性があります。また、加工条件が適切でなければ、バリや変形が発生し、必要な寸法や表面品質を得られません。
加工する形状や材質に合わせて工具と条件を選定することが、高精度な微細切削を実現するポイントです。
型彫り放電加工
型彫り放電加工は、目的の形状に作製した電極と加工物の間に放電を発生させ、その熱で材料を少しずつ除去する方法です。
半導体製造装置では、複雑な凹形状を持つ金型部品、吸着治具、位置決め治具、狭い溝を持つ精密部品などの製造に活用されます。
工具を直接押し当てて削る方法ではないため、切削工具が入りにくい狭い部分や、複雑な凹形状、深い溝などの加工に適しています。また、電気を通す材料であれば、硬度の高い金属にも対応できます。
ただし、電極の形状や消耗が加工精度に影響します。電極を高精度に製作し、放電条件や加工代を適切に設定することが重要です。
ワイヤー放電加工
ワイヤー放電加工は、細い金属線を電極として使用し、放電によって材料を切断する方法です。複雑な輪郭、微細なスリット、精密な穴形状などを高精度に加工できます。
半導体製造装置では、精密プレート、薄板部品、電極部品、微細スリットを持つ部品、位置決め用ゲージなどの製造に活用されます。
切削加工のような大きな機械的負荷がかかりにくいため、薄い部品や細い形状でも変形を抑えやすいことが特徴です。
一方で、基本的にはワイヤーを加工物に通す必要があります。また、材料の厚みや形状、ワイヤー径、加工回数によって、加工時間や仕上がりが変わります。
微細穴放電加工
微細穴放電加工は、細い電極を用いて小径の穴を加工する方法です。切削工具では加工が難しい硬い材料や、深さのある細穴にも対応しやすいという特徴があります。
半導体製造装置では、ガス供給ノズル、洗浄ノズル、冷却穴を持つ部品、流路プレート、真空吸着用の穴を持つ治具などの製造に活用されます。
これらの部品では、穴径だけでなく、穴の位置や真直度、入口と出口の形状も重要です。
求められる仕様に応じて、穴径、深さ、材料、電極径、加工条件を総合的に検討する必要があります。
研削・研磨加工
半導体関連部品では、寸法精度だけでなく、平面度や表面粗さも性能に影響します。切削加工や放電加工で形状を作った後、研削・研磨によって寸法や表面を整える場合があります。
半導体製造装置では、精密ステージ、ウエハー保持部品、位置決め基準部品、ガイド部品、平面精度が求められる治具やプレートなどの仕上げに活用されます。
研削加工では、砥石を使って材料を少しずつ除去し、高い寸法精度や平面度を目指します。研磨加工では、表面の細かな凹凸や加工痕を除去し、滑らかな状態に仕上げます。
必要に応じて複数の加工技術を組み合わせることで、形状精度と表面品質の両方を高めることが可能です。
半導体向け微細加工で重要となる精度と品質管理

微細加工では、図面に記載された寸法に仕上げるだけでは十分とは限りません。加工中の温度変化、工具の摩耗、材料の性質、機械の状態、測定方法など、さまざまな要素が最終的な精度に影響します。
寸法精度と幾何公差
微細な部品では、穴径や溝幅などの寸法だけでなく、平面度、平行度、直角度、同軸度、位置度といった幾何公差も重要です。
一つひとつの寸法が公差内であっても、穴の位置や面の傾きがずれていれば、組み立てや装置の動作に支障が出ることがあります。
部品の用途を理解し、どの部分が機能上重要なのかを把握したうえで加工工程を設計する必要があります。
温度変化への対策
金属は温度によって膨張・収縮します。一般的な部品では問題にならない程度の変化でも、ミクロン単位の精度を求める微細加工では無視できません。
加工時と測定時の温度が大きく異なると、加工直後は図面どおりでも、温度が安定した後に寸法が変わる場合があります。
高精度加工では、加工室や測定環境の温度、加工物の発熱、機械の暖機状態などを考慮することが重要です。
バリや変形への対応
小径穴や細い溝、薄肉形状では、加工後に発生するわずかなバリも製品の機能を妨げる可能性があります。
ただし、バリを除去する際に強い力を加えると、微細な形状が変形したり、角部が丸くなったりすることがあります。加工方法を選定する段階からバリの発生を抑え、必要に応じて形状に適した除去方法を選ぶことが大切です。
また、材料の内部応力や加工熱によって部品が変形することもあります。加工順序や固定方法、荒加工と仕上げ加工の配分を工夫し、変形を抑える必要があります。
測定方法の選定
微細な部品では、測定器の精度だけでなく、どのように測るかも重要です。
接触式の測定器では、測定子の力によって薄い部品が変形する場合があります。一方、画像測定や光学顕微鏡では、形状や表面状態によって輪郭の判定が難しくなることがあります。
加工対象に合わせて、三次元座標測定機、画像測定システム、光学顕微鏡、ピンゲージなどを使い分け、安定した測定結果を得ることが品質管理につながります。
半導体関連の微細加工で発生しやすい課題
半導体関連の部品は、高精度であるだけでなく、複雑な形状や短納期、少量多品種といった条件が重なることがあります。
図面どおりでは加工が難しい
設計上は成立している形状でも、実際の工具や電極が届かない、工具強度を確保できない、加工後の測定ができないといった問題が起こる場合があります。
特に、極端に深い細穴、狭い溝、薄い壁、鋭い内角などは、加工方法や工具の選択肢が限られます。
こうした課題には、加工会社と設計段階から相談し、必要な機能を維持しながら形状や公差を見直すことが有効です。
複数工程による誤差の累積
切削、放電、研削、研磨などの工程を組み合わせる場合、それぞれの工程で生じる誤差を管理しなければなりません。
加工機を移すたびに基準の取り直しが必要になると、わずかな位置ずれが累積する可能性があります。どの工程で基準面を作り、どの順番で仕上げるかを事前に検討することが重要です。
精度とコストの両立
すべての寸法に厳しい公差を設定すると、加工時間や測定工数が増え、コストが高くなります。
部品の機能に直結する箇所と、一般的な公差で問題ない箇所を区別することで、必要な精度を保ちながらコストを抑えられる可能性があります。
材料、形状、表面処理、加工方法まで含めて検討するVE提案も、精度とコストを両立させるために有効です。
半導体向け微細加工を依頼する会社の選び方
半導体関連部品の微細加工を依頼する際は、設備の種類だけでなく、技術者の経験や提案力、測定体制まで確認することが重要です。
複数の加工方法を組み合わせられるか
複雑な精密部品は、一つの加工方法だけで完成するとは限りません。
切削加工で全体形状を作り、放電加工で細部を加工し、研削・研磨で精度や表面を仕上げるなど、複数の工程を組み合わせることがあります。
さまざまな加工方法を社内で検討できる会社であれば、形状や材料に応じた工程を提案しやすくなります。
測定設備と品質管理体制が整っているか
高精度に加工できても、その寸法を適切に確認できなければ品質を保証できません。
三次元座標測定機や画像測定システム、光学顕微鏡など、加工形状に対応した測定設備を保有しているか確認しましょう。
また、測定結果を加工条件へフィードバックし、継続的に精度を安定させる仕組みがあることも重要です。
半導体関連部品や治工具の経験があるか
半導体分野では、図面に記載された情報だけでは判断しにくい要求があります。装置内での用途や組み立て方法、重要な基準面を理解している加工会社であれば、加工上の課題を早い段階で発見できます。
類似する精密部品や治工具の加工経験があるか、設計段階から相談できるかを確認することが大切です。
材料や表面処理まで提案できるか
微細加工の仕上がりは、加工方法だけでなく、材料の硬度や熱処理、表面処理にも左右されます。
加工後の焼入れや表面処理によって変形する可能性もあるため、最終工程まで見通した提案ができる会社を選ぶと安心です。
半導体関連の微細加工なら衣川製作所へ
株式会社衣川製作所は、30年以上前から半導体関連の精密部品や治工具の製造に携わり、半導体の小型化に対応するため微細加工技術を磨いてきました。切削加工、型彫り放電加工、微細穴放電加工、ワイヤー放電加工、成形研削加工などを組み合わせ、複雑な形状や精度要求に対応しています。
衣川製作所の強みは、ミクロン単位の精密さと安定性を追求し、±5μmの高精度加工に対応していることです。さらに、加工性、コスト、納期、焼入れや表面処理のリスクまで考慮し、材料や加工方法を提案しています。
半導体分野では、精密部品や治工具のわずかな誤差が装置全体の性能に影響します。図面どおりに加工するだけでなく、部品の用途や重要な基準を理解し、最適な工程を設計することが重要です。
「複雑な形状で加工方法が分からない」「高精度を維持しながらコストを抑えたい」「試作部品を短納期で製作したい」といった課題がございましたら、衣川製作所へご相談ください。長年培ってきた微細加工技術と提案力で、半導体関連部品や治工具の製作をサポートいたします。
記事一覧(次に読むべき記事)
形状で悩んでいる方
- 微細加工による細穴加工とは?加工方法や精度、対応設備を解説
- 微細溝加工とは(バリ・工具・治具の考え方)
工法を個別に知りたい方
- 微細加工における型彫り放電加工とは?原理・メリット・用途をわかりやすく解説
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- レーザー微細加工とは(向く形状/熱影響)
- 微細加工 切削とは?特徴・技術・方法をわかりやすく解説
- 微細加工における研削とは?高精度を実現する技術・用途・ポイントを解説
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品質・精度で悩んでいる方
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用途・材料別に知りたい方
- 半導体製造を支える微細加工! 技術・加工方法・精度のポイントを解説 ※現在の記事
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